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大阪高等裁判所 平成9年(ネ)895号 判決

主文

一  控訴人らの本件各控訴に基き、原判決主文第一ないし第三項を次のとおり変更する。

1  被控訴人らは、控訴人X1に対し、連帯して八八八万八四〇九円及び内八〇八万八四〇九円に対する平成六年四月七日から完済まで年五分の割合による金員を支払え。

2  被控訴人らは、控訴人X2に対し、連帯して二二万円及び内二〇万円に対する平成六年四月七日から完済まで年五分の割合による金員を支払え。

3  控訴人らのその余の請求を棄却する。

二  訴訟費用は、第一・二審を通じてこれを四分し、その一を被控訴人らの連帯負担とし、その余を控訴人らの負担とする。

三  この判決の第一項1・2は仮に執行することができる。

事実及び理由

第一控訴の趣旨

一  原判決を次のとおり変更する。

1  被控訴人らは、控訴人X1に対し、連帯して三一〇〇万四五九八円及び内二八五〇万四五九八円に対する平成六年四月七日から完済まで年五分の割合による金員を支払え。

2  被控訴人らは、控訴人X2に対し、連帯して一一〇万円及び内一〇〇万円に対する平成六年四月七日から完済まで年五分の割合による金員を支払え。

二  訴訟費用は第一・二審とも被控訴人らの負担とする。

第二事案の概要

次に訂正・付加する他は、原判決「第二 事案の概要」に記載のとおりであるから、これを引用する。

一  原判決の訂正等

1  原判決三枚目表二行目「Y1」を「Y1」に改め、同表末行「第三号証」の前に「第二、」を、同裏一〇行目「という。」の次に「同交差点を挾む東西道路の最高制限速度は毎時四〇km)」を各加える。

2  同四枚目表九行目「脱臼」の次に「骨折」を加え、同行目から一〇行目の「、両肩挫傷等」を削除し、同裏七行目「二一日まで」の次に「(実日数五日)を加える。

二  控訴人らの主張

1  後遺障害の等級認定

(一) 控訴人X1については、専門医により、右大腿骨頭の変形が認められ、右股可動域制限(上股関節の屈曲・伸展・外転・内転・外旋・内旋)、右下股筋萎縮の後遺障害が残存しているとの診断がなされ(甲第二)、自賠法施行令二条別表障害別等級表一二級に該当するとの認定を受けている。

診療録(乙第一八)によれば、同控訴人の右股関節の屈曲可動域に関する数値は検査日によって異なっているが、これはリハビリテーションのために無理な屈曲を行ったためで自然可動域を示す正常な数値とは異なるものである。

(二) また、控訴人X1の右後遺障害は、右大腿骨頭変形という物理的要因によるもので終生残存するから、医学上の合理的根拠なしにその残存期間を一〇年間と制限すべきではない。

2  過失相殺

本件事故は、控訴人X1が自車線内を走行していた際、被控訴人Y1が黄色の実線で表示された中央線を約一mも越えて対向車線を走行してきたため発生したものである。同被控訴人はタクシー運転手という自動車運転を専門的職業とする者であるうえ、交差点内を反対車線に進入したまま走行するという、一般人からは予見できない運転方法をとっていたのであるから、本件事故の責任はすべて同被控訴人にあり、信頼の原則の見地からみても控訴人X1に過失はない。

第三当裁判所の判断

次に訂正・付加する他は、原判決「第三 当裁判所の判断」に記載のとおりであるから、これを引用する。

一  原判決五枚目裏三行目を「促されたが、震えて起立できなかったこと、しかし、同月四日」に改める。

二  同九枚目表五行目の次に改行して、「控訴人X1の主張するような事情を考慮してみても、右認定を左右するには足りない。」を加え、同表末行に改行して、「控訴人X1は、大腿骨頭変形という後遺障害は終生残存するので、逸失利益の喪失期間を一〇年間に制限すべきでないと主張するが、右障害の部位・内容からみて、日常生活への影響の程度はさほど大きいものではないと窺われるから、それを慰藉料において斟酌するのは格別として、労働能力低減の期間としては一〇年とするのが相当である。」を加える。

三  同一一枚目表五行目から同裏八行目を次のとおり改める。

「1 乙第二ないし第一〇号証、控訴人X1の原審供述及び弁論の全趣旨によれば、本件事故の状況は次のとおりであったと認められる。

(一)  被控訴人Y1は、本件事故当時、前照灯を下向きに照らしながら西行車線を走行して本件交差点にさしかかったが、同交差点西詰めに駐車車両のあるのを認めながら、同交差点南詰めに停止中の車両に気をとられ、漫然と対向車両はないものと判断して時速約四〇kmのまま進行し、前方の駐車車両を避けるために、同交差点に進入する手前付近から徐々に中央線を越えて対向車線に車体の一部を進出させたため、同交差点に進入した後、対向車線を直進してくる控訴人X1運転の車両に気付き、慌てて急制動の措置をとったが間に合わず、同交差点の中央付近で相手車両の前部右側に自車前部右側を衝突させた。

被控訴人Y1が対向車両に気付いたのは、交差点に進入後、同車両との距離が前方約一七m程度に接近してからであり、気付いてから衝突するまでの距離は一〇m足らずであった。また、衝突地点は、中央線を延長した線から対向車線側に約一m弱はみ出した地点であった。

(二)  一方、控訴人X1は、本件事故当時、前照灯を下向きに照らしながら東行車線を走行して本件交差点にさしかかり、同交差点の手前で前方約四〇m先を走行してくる対向車両に気付いたが、同車が自車進路上に進出してくるとまでは考えず、時速約四〇kmでそのまま同交差点に進入したところ、相手車両が中央線を越えて自車進路前方に進出してきたので、急制動の措置をとるいとまもなく衝突し、その衝撃で約〇・七m後退して停止した。

控訴人X1が相手車両が自車進路に進出してきたのに気付いたのは、同車両が前方約一一mに接近してからであり、気付いてから衝突するまでの距離は約八mであった。

2 以上認定の事実に照らして判断するに、被控訴人Y1は、対向してくる控訴人X1運転車両に気付いた時点では、すでに中央線を越えたまま本件交差点内に進入しており、その走行速度と制動距離からみて、その時点で急制動の措置をとっても衝突地点までに停止することは不可能であったといえ、同様に、控訴人X1としても、その走行速度からみて、被控訴人Y1運転車両が自車進路に進出して走行していることに気付いた時点では、すでに制動距離内に接近していたもので、仮に急制動の措置をとったとしても衝突を回避することは不可能であったということができる。

右のように、交差点において青色表示信号に従って自車走行車線を走行する運転者は、対向車両も同様に、その走行車線内を走行するものと信頼してよく、制動距離内に接近した後に対向車両が自車進路に進出してくることまでも予測して走行すべき注意義務はないといわなければならない。

したがって、本件事故は、被控訴人Y1が交差点を通過する際、前方駐車車両を避けるために対向車線に進出して走行するにあたり、対向車両の有無やその速度を注視して走行すべき注意義務があったのに、これを怠り、前方への注意を欠いたまま走行した一方的過失により発生したものであり、控訴人X1には本件事故発生につき過失はないというべきである。」

四  同一二枚目表初行「過失相殺」から同表二行目「となり、」までを削除し、同表五行目「五五二万二七二七円」を「八〇八万八四〇九円」に、同表六行目「五五万円」を「八〇万円」に、同表七行目「六〇七万二七二七円及びこれ」を「八八八万八四〇九円及び内弁護士費用を除く八〇八万八四〇九円」に各改める。

五  同一二枚目表一〇行目から同裏五行目までを次のとおり改める。

「控訴人X2の損害は二〇万円となり、同控訴人が本件訴訟の提起・追行を弁護士に委任したことは記録上明らかなところ、本件事案の内容・訴訟の経過・認容額その他諸般の事情を考慮すると、本件事故と相当因果関係のある弁護士費用としては二万円が相当であるから、同控訴人は、被控訴人らに対し、本件事故に基づく損害賠償として、不真正連帯の関係で二二万円及び内弁護士費用を除く二〇万円に対する平成六年四月七日(同控訴人の請求する本件事故の翌日)から完済まで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求めることができる。」

六  以上の次第で、控訴人らの本件各控訴は一部理由があるので、原判決主文第一ないし三項を本判決主文第一項のとおり変更することとして、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 小林茂雄 裁判官 小原卓雄 裁判官 髙山浩平)

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